不動産業界のことも知っておこう③~専任返し~

皆様、こんにちは。
中古マンションマンです。

中古マンションをこよなく愛する、中古マンションマンです。

 

これまで、仲介手数料、囲い込みと、不動産業界に関わる
テーマについて書いてきましたが、今回が最後のテーマになります。

chukomansionman.hatenablog.com

chukomansionman.hatenablog.com

 

今回は専任返しという仕組みについて取り上げてみますが、
元々はこの専任返しについて書こうと思っていたんですね。
ところが専任返しを説明するためには、仲介手数料のお話とか、
囲い込みのお話とか、この辺りを予め解説しておかないと、
長くなりすぎてしまうなと思い、3本だてにしたという経緯があります。
なので「不動産のことも知っておこう」の中でも、
今回が一番気合が入っているのです。

 

登場人物紹介

専任返し、、、なかなか普段の生活で耳にすることはないですよね。
ただ、中古マンションの世界にいると、当たり前に聞こえてくる言葉です。
専任返しについてお話するために、まずは登場人物を紹介します。

まずは、自分の物件を売りたい人=売主さんです。
現況(住んでいるままの状態)のお部屋を持っていますね。

f:id:chukomansionman:20170531104255p:plain


次に出てくるのが、今回の主役と言ってもいいでしょう、
不動産仲介会社さんです。ちょっと悪そうな顔してますね。

f:id:chukomansionman:20170531104422p:plain

それから、不動産会社の中でも、仲介さんとは別の役割を担う、
買取再販会社さんです。

f:id:chukomansionman:20170531104656p:plain

最後に、あまり登場する機会はありませんが、
買取再販会社がリフォームして売り出した物件を
買いたい人=買主さんです。

f:id:chukomansionman:20170531104805p:plain

この4者によって不動産の取引が行われることになりますが、
上で書いたように、主役は不動産仲介会社さんであることが、
この先読み進めていくとわかってくると思います。

仲介会社と買取再販会社

今回2種類の不動産会社が登場しています。
「仲介」と「買取」です。
具体的な取引の流れを見る前に、それぞれの役割を簡単に説明します。

仲介会社

文字通り、不動産の仲介、つまりは売りたい人と書いたい人の橋渡し
を行う不動産会社です。
三井のリハウス東急リバブル住友不動産販売などの店舗を
駅前で見かけたことがあるのではないでしょうか?
他にも色々な会社がありますが、基本的にはBtoCのお仕事で、
収入源は仲介手数料となります。

買取再販会社

不動産を買い取って、転売し、利益をあげる会社です。
BtoBのお仕事なので普段の生活で存在を意識することはないでしょう。
SUUMOやHOME'Sなどのポータルサイトを見る中で、
「新規リフォーム済み」などと謳う物件を見たことがあるでしょうか。
見たことがない方は適当な条件でSUUMOで検索してみてください、
嫌っていうほど出てくると思います。
そこに載っている「リフォーム済み」「リノベ済み」の物件を生み出している
のが買取再販会社です。
リフォーム済み物件の売却価格から仕入れ価格と諸経費を引いた額が儲けとなります。
再販会社については、過去にも記事にしていたのでご参考までに。

chukomansionman.hatenablog.com

専任返しってなんなの?

不動産業界では囲い込みと呼ばれる問題が横行していることを
前回の記事で書きました。
専任返しは、その進化版というか、より楽により儲かる仕組み
だとお考えいただければ良いかなと思います。

囲い込みをして「両手仲介」となれば「片手仲介」の2倍の仲介手数料
が入ることを説明しましたが、専任返しを使えば、
「片手仲介」の4倍の仲介手数料を狙いにいくことができます。

それでは、専任返しという仕組みについて見ていきましょう。

①売主さんが仲介さんと媒介契約を結ぶ

f:id:chukomansionman:20170531111334p:plain

事情は様々ですが、何か理由があって自宅を売却することになったようです。
売主さんは自分で買いたい人を見つけたり、手続きを行うことが困難なので、
仲介会社さんに相談し、仲介をお願いするための契約=媒介契約を結びます。
仲介会社さんからすれば、この契約が取れた時点で片手分の仲介手数料は
確定したようなものです。売れさえすれば、仲介手数料が入ります。

②仲介会社さんが買取再販会社さんに声をかける

f:id:chukomansionman:20170531112723p:plain


売主さんからの依頼を受けた仲介会社さんは、
まず面識のある買取再販会社さんに相談を持ちかけます。
いくらだったら(当然相場より安い金額で)買うのか、
買取再販会社さんの確証を取り、買取再販会社に買ってもらえるよう、
仲介会社さんは一生懸命売主さんを説得します。

③買取再販会社さんが安く買う

f:id:chukomansionman:20170531113516p:plain

無事に買取再販会社さんが買うこととなれば、
売主さんと買取再販会社さんとで売買契約を結び、
後日物件代金の支払いと所有権の移転が行われます。
この時点で、両手仲介確定です。

④買取再販会社さんがリフォームを行う

f:id:chukomansionman:20170531113809p:plain
買取再販会社さんは転売屋なので、現況のままでは買い手がつかない物件に
リフォームを施します。
あまりお金をかけすぎると転売時の利益が減ってしまうし、
かといってあまりリフォーム費用をケチりすぎて売れなかったら元も子もないし、
という絶妙なラインでリフォーム費用・内容を決定し、工事を行います。

⑤買取再販会社さんが仲介会社さんと媒介契約を結ぶ【専任返し】

f:id:chukomansionman:20170531114801p:plain


ここまでで、転売の準備が整いました。
次に行われるのは、買取再販会社さんと仲介会社さんの媒介契約です。
そうです、買取再販会社さんが今度は売主となって、
仲介会社さんに仲介を依頼することになるのです。
これこそが、専任返しという仕組みなのです。
買取再販会社さんは、そもそも仕入れができないとビジネスが成り立ちません。
なので、物件を紹介してくれる仲介会社さんには頭が上がらないのです。
次回も物件を紹介してもらえるために、仲介会社さんに誠意を見せる必要があり、
売るときにも仲介をお願いするという形で、その誠意が表れています。
リフォーム後に転売するときに仲介会社さんに仲介をお願いすることは、
実は、元の売主さんから買取再販会社さんが購入する時点で約束されていたのです。

⑥買主さんがリフォーム済み物件を購入する

f:id:chukomansionman:20170531115053p:plain


最後に、仲介会社さんが自社で買主さんを見つけることができれば、
買主さんと売主である買取再販会社さんから仲介手数料を受け取ります。
これにて、一件落着。

誰が儲かるの?

この専任返しという仕組みで儲かるのは、仲介会社さんです。
なんせ「片手」の4倍の仲介手数料が入るわけですからね。

仮に売主さんの持っている物件の相場が3,000万円だとして、
相場よりも500万円安い2,500万円で買取再販会社さんが買取り、
リフォーム後に3,500万円で売り出し、成約した場合で試算してみましょう。

売主さん→仲介会社さん:2,500万円×3%+6万円=81万円
再販会社さん→仲介会社さん:2,500万円×3%+6万円=81万円
再販会社さん→仲介会社さん:3,500万円×3%+6万円=111万円
買主さん→仲介会社さん:3,500万円×3%+6万円=111万円
合計:384万円(税抜)

すごい、合計384万円となりました。
この仲介手数料をを片手仲介で稼ごうとすると、
1億2600万円の物件の仲介を行わなければなりません。
築浅のものと比べて単価の低い中古マンションですが、
この仕組みが使えればガツンと儲けを生み出すことができます。

何か問題があるの?

専任返し、なんだか凄まじい仕組みである事がおわかりいただけましたか?
別に仲介会社さんが儲かることは悪いことではないし、
「中古マンションは金の卵」というとなんだか悪い気はしませんよね。

しかし、この仕組みが横行すると、当然不利益を被る人も出てきます。
不動産業界、特に仲介会社さんが儲けるために、
誰が不利益を被っているのかをみていきましょう。

売主さん
売主さんは、当然のことながら物件をできるだけ高く売りたいと思っています。
専任返しの仕組みがあることによって、物件を早く売ることができるのは、
売主さんにとってもメリットとなりますが、価格は相場以下になります。
仲介会社さんは、
「いつ売れるかわからない状態で相場で売り出すより、
 少し安くてもすぐに売れるほうがいいんじゃないですか?」
と売主さんに説得して、買取再販会社さんに売るように促すと思います。
そう言われればもっともな気もしますが、
本当に「いつ売れるかわからない」のでしょうか?

現在の相場や過去の成約事例を知ることによって、
どれくらいの金額ならどれくらいの日数で決まる可能性が高い、
というところまではデータ化できるはずです。
本当は相場通りの金額でもすぐに売れたかもしれない物件を、
必要以上にに安く売却させたとすれば、それは正しいことでしょうか。

現況で物件を買いたい人
中古マンションに住む人の中には、買取再販会社さんが生み出した
リフォーム済みの物に住む人もいますが、最近では、自分で好きなように
リフォーム・リノベーションしたい人も増えています。
そのような人にとっては、余計な金額が乗ってしまっている物よりも、
まだ何も手がつけられていない現況の物件を購入したほうがお得です。
リフォームする前の状態でも、相場通りの金額で購入するのであれば、
売主さんにとっても、現況で買いたい人にとってもハッピーな取引になります。

また、売主さんから預かった物件を買取再販会社さんに買ってもらうために、
仲介会社さんが囲い込みをすることもあります。
現況で買いたい人が、他の不動産仲介会社のお客様だった場合、
そちらで決まれば片手仲介になってしまうので、
「契約予定です」と言って突き返します。
買取再販会社さんよりも高い金額で買いたい人がいるのに、
その事実が売主さんに告げられることのないまま、
相場よりも安い金額で売主さんの物件が売れてしまいます。

まとめ

専任返し、という聞きなれないであろうテーマを取り上げましたが、
中古マンションの取引において、売りたい人 ・買いたい人の利益よりも、
不動産仲介会社の利益の最大化が焦点となっていることがわかります。

仲介会社の儲けは増えるものの、そこであからさまに不利益を被る人が
いるのであれば、是正されるべき仕組みかもしれません。
専任返しによって、買取再販会社に相場以下の価格で物件が流れる仕組みは、
まさに情報の非対称性を利用した、不動産業界ならではのものと言えます。
早く売れて嬉しい売主さんもいますが、本当はより高く売れたかもしれません。

中古マンションの購入・売却を検討している方は、
専任返しという不動産の慣習について知っておいて損はないと思います。
ぜひご参考にしていただければ。

f:id:chukomansionman:20170531123704j:plain

 

では、また。