『ニュータウンは黄昏て』を読みまして

皆様こんにちは。
中古マンションマンです。

中古のマンションをこよなく愛する、中古マンションマンです。

 

Twitterで話題になっていたので気になっていたものの、
まだ読んでいなかった『ニュータウンは黄昏て』を、今更ながら読んでみました。

あらすじや書評は、見事にまとまめられているものがあるので、
以下のリンクなどをご参照ください。
私は、これから中古マンション購入を検討している人に向けて、
本書から得られたヒントを書いていければと思います。

すこーしだけ、ストーリーをお話ししますと、
最寄駅からバス便のニュータウン団地に暮らす家族の葛藤が、
母・娘それぞれの視点から描かれています。
バブルの絶頂で買ってしまったためローンの返済に苦しみ、
老人ばかりの管理組合でそれぞれのエゴのぶつかり合いに苦しみ、
こんな事ならこんな家買うんじゃなかったという後悔が綴られています。
娘の恋とか、色々なストーリーが展開されるのですが、
基本的に読んでてなんとも切なく、やるせない気持ちになります。


DJあかいのマンション総研(DJあかいさん)

mansioninstitute.com

 

マンション購入を真剣に考えるブログ(のらえもんさん)

wangantower.com

 

ヒント① 中古マンションは『立地』

この物語に登場する中古マンションは、
バブルの絶頂時には6,000万円以上したものの、
現在の売却想定額は1,500万円程度の団地です。
おまけに、住人の負担なしでの建て替え話が持ち上がるも、
結局はディベロッパーの採算が合わずに頓挫してしまいます。

何故こんなことになってしまったのか?

そう、この団地がニュータウンの駅遠物件だったからです。

駅から近ければ、ここまで価値が下がることはなかったはずだし、
敷地が十分にあるのであれば建て替えによって資産価値を高める
ことはできたかもしれません。
このニュータウンの様に緑が溢れ、「量」より「質」を重視して
作られた集合住宅であれば一定の需要はあるはずです。
ただ、同じ様な環境で、駅から歩いてすぐのところと、
バスが必須のところを比べたら、限られた需要が前者に集中してしまいます。

駅から近いことが全てではありませんが、将来的に需要がある立地
を意識的に選択することが重要だと言えます。

 

ヒント② 中古マンションは『管理』

「マンションは管理を買え」とはよく言われるものの、
じゃあ一体管理ってなんなのさ、ということを本書から学ぶことができます。

管理状態がいいマンションってどういうマンションでしょうか?

 庭木の手入れが行き届いている
 自転車がきれいに駐輪されている
 掲示板に貼られた紙がきれいに並んでいる
 修繕積立金がたくさん溜まっている
 長期間の修繕計画が立てられている
 外観がきれい
 etc

管理の良し悪しを判断するためには色々な要素を踏まえて、
総合的に判断するしかないと言えます。

総合的な判断を下す重要な材料として、理事会・総会の動きについても、
事前にできる限りの情報を集めるべきだな、と本書を読んで痛烈に思いました。

見た目だけではわからないから、過去の修繕履歴・重要事項調査報告書・
長期修繕計画案を読み込み定量的なデータを精査することは大切です。
しかし、結局、人対人のやりとりについては議事録や管理会社の担当者、
住人の方のお話など定性的な情報も合わせて吟味する必要があると言えます。

※中にはワンマンな理事長が長く天下を取って問題が起きるケースもあります。

この団地では、理事会に定年制を設けるという議題も出ていた様で、
そんな事が話し合われているということを知ったら、
他の部分が気に入っていても、購入を避ける若者は増えるでしょうね。
無料でも売れなくなる日は近いです。

 

ヒント③ 建て替えが実現するならラッキー 

建て替え推進派の住人が、建て替えの実現のために一生懸命活動する姿が
この物語では登場します。
が、おそらくこの団地に関しては建て替えを迎えることは困難でしょう。
建て替えを行うための負担・犠牲が大きすぎて、
無理して建て替えをしようと望む人は十分に集まらないでしょう。

実際に中古マンションの購入を検討する時でも、
この先どれくらい住めるのだろうか、という事を気にする方は多いと思います。
つまり、どれくらい建て替えをせずに保っていられるのか、という事です。
上記の推進派住人は建て替えのメリットをよく理解していましたが、
一般的には建て替えはネガティブな印象を持たれるのではないでしょうか。

ところが、本書で登場した通り、建て替えが実行されると、
居住者にとってメリットがあるのです。
資産価値も上がれば、設備も新品になりますからね。
私がいうのもなんですが、建て替え万歳なんです。

それなのに、なんでこんなにも建て替えが実行されていないのだろう、
という疑問も出てくると思いますが、実際には住人の負担ゼロで行える
建て替えというのがほとんどないのです。

二子玉川、三田などの超好立地や、低層で敷地に余裕のある団地であれば
実現した事例もありますが、そうでなければ、建て替えの実現は困難です。
むしろ、丁寧に管理をして長持ちさせようという方向性になるはずです。

なので、もしも中古マンションに住み始めてから、建て替えが決まるとなれば、
それは住人にメリットがあるはずなので、基本的にはラッキーな事です。
積極的に建て替えを見越して中古マンションを選ぶというのも難しいですが、
ともあれ、建て替えが起こったらラッキーだという考えは持った方が良いでしょう。

 

すごく勉強になる本でしたので、また読み直してみます。
それから、なんと言われようと、やっぱり地主は羨ましい、と思いました。

では。